私は幸福の科学の信者ではないし、その他の新興宗教にも関心がありません。ごくごく普通のよくある仏教徒の家庭です。身内も皆そう。お葬式や法事では仏様のこと、あの世のこと、故人が天国にいるのかなと、そんなことを少しは考えたりもしますが普段は全く考えません。初詣には神社に行き、チャペル式で結婚式を挙げクリスマスは盛り上がる。そんな大衆的、典型的な日本人です。
そういう者からみると、こちらの本でたどたどしい文章で吐露しているこの若い女優さんは明らかに精神的に追い詰められていて、心身をやられているなというのが、文章から滲みでています。この前に出されている「ふみかふみ」でも、その片鱗がよく出ていて、あちらの本も、個性的とか変わった子というよりは、ちょっと病んでいるのかなという感じです。
昔から「芸能界は怖い」なんて言われていますが、清水さんがここに記されたことは氷山の一角なんでしょう。昔の女優さんが、その当時の暴露話を披露することがありますが、胸塞ぐ内容だったり、「それは犯罪では」と驚いたりすることも珍しくありませんでした。
本書で清水さんが語る内容は、現在の事務所の横暴さと劣悪な待遇、デビューするまでどんな感じの子だったか(中学時代はモテモテなど)、デビューするきっかけ、幸福の科学のAさんとの交流、幸福の科学という宗教の素晴らしさについて、出家について。
本書内で清水さんが繰り返し強調するのは、幸福の科学の精舎に足を運ぶことも、一般の人たちが神社やお寺に行くのも同じ、その感覚は変わらないということ。洗脳されているわけではないということ。
個人的には何を信仰するかは自由だと思いますし、彼女が信者だからといって、それで印象が下がるとか、特にどうこうとは思いません。ただ、私は新興宗教にありがちな「まわりにすすめる」「良さを売り込む」、この押しの強い部分が生理的に苦手です。まわりの平凡なよくある仏教徒の人達は、自分の信仰を他人にすすめません。
また、実生活のバランスを崩すほど宗教の方にウェイトが傾けば、それははたしてどうなのかなと思うのです。人は完璧ではないし俗です。俗で不器用で、泣いたり笑ったり怒ったり醜かったり、しょうもないことで悩んだり凹んだりするから素晴らしいのです。自分に足らない部分があるから、足らない他人のこともわかります。そんな人間臭い部分を認めず、綺麗になりましょう清廉でありましょうというのは、あくまで個人的な意見ですが、とても技巧的で不自然に思えるのです。
神社やお寺に観光気分でお参りする人は、それを自分の人生の主軸に据えません。自分の人生を託したり、大きく左右させたりしません。それは宗教や信仰などではなく、自分で考えてもがきながらケリをつけています。寺社で自分のお願いごとをするのではなく、ただ日々の感謝するだけの人は多いです。そこは清水さんがどんなに強調しても「同じじゃないよ」と言わざるをえません。
まだとても若い女の子ですから、ものの見方が大人のそれとは違い、本書でもそうですが稚拙な部分が目立ちます。それは仕方がないです。文章もたどたどしいし、中学生から芸能活動をし芸能界に身を置き、特殊な世界で生きてきたわけですから、ものの見方がズレるのも仕方がないと思います。世間一般で当てはめれば、やっと新卒で働き始める子たちと同年齢ですし、そんな子が劣悪な環境に身を置けば、心も考え方もいびつになって当然でしょう。
報道などでは、「事務所VS幸福の科学」という感じになっていますが、私は親世代ということもあり、清水さんの親御さんがどうして娘さんを守ってあげなかったのかと、そこが気になりました。
本書で、清水さんが仮面ライダーに出演されていたころに、すでに事務所の過酷な待遇や、早朝から深夜までの労働があり、その当時、清水さんが精神的に追い詰められカッターで暴れ自室を傷つけ、その上に右手も自分で切り付けたというショッキングな話が書かれています。
その時、お父様が部屋に入ってきて止められたそうですが、泣きながら娘にタオルを渡すだけでなく、なぜそこでもっと真摯に対応しなかったのか…なぜそこでまた娘を撮影に送り出すのか…親なら、どんなことをしてでも我が子を守ってやろうと思いますし、我が子がカッターを振り回して暴れれば一大事でしょう。契約など色々な事情はあるにせよ、そこでの親御さんの対応は同じ親として違和感がありました。
親目線で読むと、なんとかこうなるまでに親や大人が救えなかったのかと、胸が痛むエピソードが多いです。芸能界に入らず転校もせず、ふつうに中高大学と一貫教育のまま、そのまま今に至れば、彼女はもっと幸せだったし彼女らしい生き方をできたのではないかなと思います。人気者で友達も多いまま楽しい学生時代を送り、出家もなかったでしょう。
芸能事務所も劣悪ですが、こんな若い女の子の出家を受け入れるのも、それもまた違うような気がします。うちの菩提寺であれば悩み相談はのってくれても出家しますなんて言えば「あなた、そんなことを簡単に決めてはいけませんよ。出家するのは全てを捨ててしまうことです。もったいないですよ」と、一生を本当に考えてくれるからこそ、優しく厳しく諭されそうです。
ちなみに、書店ではビニールで密閉された状態で山積みでした。ネットで在庫がなくても、書店の店頭で普通に買えました。話し言葉がそのまま文章になったような内容で、フォントも大きめ、文字間隔もゆったりめに開いており、スカスカした感じです。ちょっとした雑誌の特集記事で、十分まとめられそうなものが、あえて一冊の本になったような。読むスピードが速い人なら、楽に1時間かからず読み終えられます。
■著者プロフィール
千眼 美子(せんげん よしこ・法名)/ 清水 富美加(しみず ふみか・本名)
日本の女優、女性ファッションモデル、グラビアアイドル。東京都出身。レプロエンタテインメントに所属していたが出家によって離脱、2017年5月20日に契約終了し、新たにARI Productionに所属。幸福の科学信者・出家者。
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